Esercizio Terapeutico Conoscitivo Aichi
文責:岡崎南病院 理学療法士 首藤康聡
出版社:日経サイエンス社
日経サイエンス編集部 編
意識はどのようにして生まれてくるのか。脳のニューロンの活動から意識を説明することはできるのだろうか—————。意識の解明は現代科学に残された究極の難問のひとつだ。はたして脳科学がこの問題に答えを見いだせるのか、否定的な見方をする人も少なくない。また哲学や宗教の立場から、神経科学とは異なる考えを示す人たちもいる。『意識はどのように生まれるのか』で意見を戦わせるコッホとグリーンフィールドは、神経科学の視点から意識の問題の解明に力を注いできた。現在の研究の主眼はともに、意識の変化にともなって移り変わる神経活動「Neural Correlates of Consciousness(NCC)」を見つけることにある。研究の方向性は一致しているものの、コッホが脳の特定の領域にある「特定のニューロン集団」に着目する一方、グリーンフィールドは、脳のあちこちでニューロンが同期発火し「協調的なニューロン集合体(アセンブリ)」が生まれては消えていく過程が意識を生み出すと述べる。2人の科学者の研究手法や考え方の違いから、神経科学的アプローチの課題も見えてくる。(「はじめに」より抜粋)
それぞれ異なるアプローチで意識の謎に迫る科学者のそれぞれのインタビューが掲載されており、論文に比べ肩の力を抜いて気楽に読める感じがあり、非常に理解しやすい内容となっている。また基本的な議論として二人の科学者の意見をまとめている部分もあり、その考え方の違いを比較しやすくなっている。これ以外にもバロー神経科学研究所に籍を置くMrtinez-Condeらの神経科学とマジックを融合させ意識の謎に迫る『なぜマジックにだまされるのか』も非常に興味深い内容となっている。『麻酔の科学 脳に働くメカニズム』では記憶の消失や覚醒レベルの低下など、麻酔の効果として一時的に現れる現象を通して、意識の解明につながる脳科学のテーマとして書かれてある。
その他にも多くの科学者がそれぞれの立場で、それぞれ異なったアプローチで意識の解明に迫ろうとしている事がインタビュー形式で掲載されており、意識という聞いただけで尻込みしそうな難易度の高いテーマをわかりやすく説明している。また、各項目にはより深く知りたい読者のために参考文献も掲載されており、より深く追求しようとする読者にとっても非常に役に立つ書籍である。