top of page

人間の未来 AIの未来

山中伸弥 羽生善治 

講談社

 

 ノーベル生理学・医学賞受賞の山中伸弥教授と国民栄誉賞受賞の羽生善治将棋棋士の2人が著者である。最近のAIの発展は凄まじく、最近、私自身が思っていたAIと人間の未来がどのようになっていくのか、また、医療やリハビリテーションの世界がどのようになっていくのかという疑問に何かヒントを与えてくれるのではないかと思い読んでみました。

 羽生棋士がAIをめぐる様々な現場を取材して、専門家が口を揃えて「決定までのプロセスがブラックボックスだ」と言うそうです。医療現場でAIを使っていくときに、患者さんに「どうしてこの治療法をするんですか」と聞かれて、「理由はわかりませんが、確率的に高いからです」という説明だけで命を預けてもらえることができるでしょうか。

AIに言われたことを、十分に納得できるかたちで人間が説得されるかどうか、社会にAIを導入するときに非常に重要なポイントだと思います。と述べています。

また、山中教授は、医療において今、医師がやっていることはいわばパターン認識で検査データーを見て、まず診断をつける。さらに検査データーを見て、治療法を決めていく。これは、今でさえ多くの部分はコンピューターがやったほうが正確かもしれません。ただし、医療現場における患者への触診とか、お医者さんと話すことによる患者さんの安心感とかをコンピューターが担えるかどうか。

 羽生棋士から山中教授へ「独自のアイデア、発想というものは、どのようにして生まれるのでしょうか。」という質問があり、山中教授は他の人と違うことをやろうと思ったら、三つのパターンしかないと、一つはアインシュタインみたいに天才というパターン。二つ目は、他の人も考えているようなことだけれども、一応自分も思いついた。実験をしてみて、予想していなかったことが、起こったときに、それに食らいつけるかどうか。それが他の人と違うことをやる二つ目のチャンスです。三つ目は、自分も他人もみんな「これができたら素晴らしい」と考えているんだけれども、「無理だろう」とあきらめて、誰もやっていないことにあえてチャレンジするというパターンです。僕は三つのパターンのどれでもいいと思うんです。他の人がほとんど考えていないような新しいことであれば、「これは失敗して、もいいや」という感覚でやってみることがすごく大切だと思います。

山中教授と羽生棋士という異分野の第1線で活躍する2人のコラボによる書籍は、これからの医療現場がAIにより変化する領域とAIではどうにもできない領域があること、

臨床現場はエビデンスに基づくもの、まだ、エビデンスが確率されていないもの、全く誰もやってない治療法など様々なものが展開されています。

 患者を治療していくために常に前向きで前進していく考えが必要であること、山中教授の独自のアイデア、発想がどのように生まれ、チャレンジし続けることの重要性を学ぶことが出来ました。

文責 尾﨑正典

bottom of page