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不安と恐怖のトップダウン制御を媒介する扁桃体基底内側部

著者:Avishek Adhikari, Talia N. Lerner, Joel Finkelstein, Sally Pak, Joshua H. Jennings, Thomas J. Davidson, Emily Ferenczi, Lisa A. Gunaydin, Julie J. Mirzabekov, Li Ye, Sung-Yon Kim, Anna Lei & Karl Deisseroth

雑誌:Nature 527, 7577 |  Published: 2015年11月12日 |  doi: 10.1038/nature15698

 

さまざまな精神疾患の中でも、不安が関連する症状は薬物療法が最も難しいが、認知療法に反応する。従って、内側前頭前野(mPFC)の認知制御領域から起こり、そうした症状に関連するトップダウン経路を明らかにすることに関心が集まっている。そうした経路が明らかになれば、情動の認知制御についての理解が進み、治療的介入の道が開ける可能性がある。過去の研究から、他の脳構造の亜領域と同様に、mPFCの背側と腹側の亜領域が恐怖に際して相反する作用を持つことが示唆されている。こうしたさまざまな可能性のうち、どれが正確な因果的トップダウン結合の標的かは、はっきりしていない。本論文では、マウス扁桃体の扁桃体基底内側部(BMA)が腹側mPFCの主要な標的であることを示す。BMAニューロンは、安全な環境と有害な環境とを識別しており、BMAが活性化すると恐怖関連のすくみ行動や高不安状態が軽減する。さらに、腹側mPFC–BMA間投射は、基底状態でもストレス誘発不安状態でも、不安状態や恐怖学習関連すくみ行動のトップダウン制御を行うことから、さまざまな状態と関連する新たなトップダウン行動調節経路の1つが明確になった。

【コメント】

転倒による恐怖心は様々な活動制限を来たし、転倒そのものと同様に深刻な問題です。転倒により恐怖心を生じる患者がほとんどですが、転倒していない患者でも転倒恐怖感が生じる場合があります。その原因はどこにあり、どのように学習することで恐怖感が無くなるのか?豚足に憑依された腕の著者である本田慎一郎先生は「中枢神経による適切なプログラミングがなされ正しい行為が遂行されれば海馬からスムーズに動くことが出来たという情動が表象化され、その情報は前頭前野を活性化し、不快な情動経験を想起させる偏桃体を制御できる可能性がある」と言われています。今回の文献と合わせ、内側前頭前野‐偏桃体基底内側部の経路の活性化が恐怖心を制御するヒントになりそうです。

​(文責 国府病院 岩谷竜樹)

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