Esercizio Terapeutico Conoscitivo Aichi
著者:深尾憲二朗
雑誌:神経心理学27 ;131-142, 2011
要旨:体外離脱体験(OBE)について,広い視野から考察した.近年Blankeによって提唱され,広く支持されているTPJ局在節について,典型的OBEにおける「自分の後頭部や頭頂部を見る」という要素,すなわち視点の自己身体外の位置への移動が説明できないことを指摘した.次にてんかん発作症状としてのOBEについて歴史的に通覧し,自験例を挙げて分析した.自験例におけるOBEが解離症状としてのOBEから区別することが困難であることを指摘し,さらに健康な日常生活においてもOBEが起きうることを指摘することによって,OBEの解釈においては局在論的な観点と全体論的な観点の両方が必要であることを強調した.
Key words:体外離脱体験(OBE),側頭頭頂接合部(TPJ),てんかん,解離性障碍,一人称てきパースペクティヴ
コメント:
OBEの体験は、夢物語のような主観的体験だと思っていた事象が、現在はTPJがその領域にあたることが判明されてきており、脳科学の進歩に驚きます。しかしながら、OBEとは違うが臨床において患者が語る自己身体の主観的体験は様々で「他人の手」「足が棒の様」「膝から下が感じられない」などいう語りを聴くことは多いです。今回、論文内で認知科学に見たOBEにおいて障碍されている三要素として、①自己同一性(unity,self identiy)②自己の位置づけ(self location)③一人称的視空間パースペクティヴ(first-person visuospatial perspective)というものが挙げられていました。難解な用語ではありますが、例として視覚による位置情報と主に体性感覚・運動感覚から成る身体図式による位置情報の不一致によって、自己の定位が自己身体の定位とずれてしまうことであることが述べられていました。これらは、患者が語る自己の身体経験をセラピストが解釈できるヒントとなる要素ではないかと考えます。
(文責 進藤隆治 岡崎共立病院)