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注意分散が体性感覚の初期反応に及ぼす影響 ─体性感覚誘発電位による検討─

Effect of Divided Attention on the First Response of the Somatosensory System:

A Study of Somatosensory Evoked Potentials

掲載:理学療法科学 31(5):697–700,2016

著者:池田 拓郎(国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 理学療法学科)他

 

読んでみようと思った理由

現在,愛知県認知神経リハビリテーション研究会(以下ETCA)では,各グループに分かれそれぞれのテーマを掲げ勉強を行い,その内容をまとめETCAで発表,また学会報告に向けて活動している.私の所属する岡崎グループでは「転倒」をテーマに勉強会を開催しているが,このテーマに関連する項目をピックアップし勉強会を開催している.今回,「転倒と注意」というテーマで勉強会を開催したが,その勉強会への準備のために調べているさなかに出会った論文です.

 

要旨

〔目的〕経皮電気刺激中に暗算を遂行した時の体性感覚の初期反応に及ぼす影響を検討することとした.〔対象と方法〕対象は健常若年成人 12 名とした.全員右利きであった.左もしくは右の正中神経に対する経皮電気刺激中に連続 7 減算の暗算を遂行した時としない時での体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potentials;SEP)を誘発電位検査装置によって記録した.SEP は,初期成分(N 20,P 25,N 33 および P 45)の潜時と振幅を計測した.〔結果〕左正中神経刺激での右体性感覚野上の N 33 の潜時が暗算によって遅延を示した.〔結語〕右半球での暗算と体性感覚の情報処理が同時に行われた結果,右一次体性感覚野が干渉による抑制を受けたのではないのかと推察される.

キーワード:注意分散,体性感覚情報処理,暗算

 

感想

注意の分散と運動能力の関係性を述べた論文は多くあるが,体性感覚との関係性を報告した論文は目にした事がなかったので興味をそそられた.注意が分散された際には初期の段階で体性感覚領域への抑制が行われている可能性を示唆しているが,臨床を進めていく際になんとなくそうだろうなと感じていた事が神経学的に考察されている点が非常に興味深い.また,運動学習には重要なシナプス前抑制との関連はあるのか,また僕が日々携わっている自閉症の子供たちの運動学習のヒントになるのではないかと考えている.

(岡崎南病院 首藤康聡)

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