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フォーカシングによる傾聴と『身体知』の活用 

著者:高橋寛子
雑誌:MB Med Reha No.208: 23-29,2017


【要旨】
リハビリテーションは、本来身体のみならず、身体とこころの両面にまたがる領域に関与しているのではないだろうか?本稿では、セラピストが患者の内側の気持ちやこころの理解に関心を向けるとき、果たしてどのような効果がもたらされるかを問題にする。近年、心理療法の世界では身体志向のアプローチが盛んになっているが、フォーカシング(focusing)はこころと身体とが「今、ここで」交差する身体感覚(フェルトセンス(felt sense)と呼ぶ)に注意を向ける方法である。問題や状況についての違和感などの言葉になる以前の身体的実感を受容的に受け止めることによって、思わぬ気づきや新た進展が、「腑に落ちる」形で心身にもたらされる(フェルトシフト(felt sift)と呼ぶ)
フォーカシングには3つのポイント.Pointがあり、①フェルトセンス(「感じられる意味感覚」という意味)それに②受容的に注意を向ける態度、そこから③体験過程の進展が起こることであげられる。フェルトセンスとはなんとなく気になるや違和感など身体に直接感じられる感覚で、最初はぼんやりとしてはっきりとつかめないが、そこには言語や意味に先行して大切な意味がつまっている。(例「石のように硬くゴリゴリした感じ」「ピーンと張った冷たい感じ」「奥へ沈み込んでいくような重い感じ」といったような身体的実感として感じられる)フォーカシングは、このフェルトセンスに注意を向け、認め、丁寧にゆっくりとそれと付き合っていく。
よってフォーカシングは、セラピストの傾聴(リスニング)能力を向上させ、患者の心を深く理解し、患者の自律性や意欲を高めるなどに有効である。また加えて患者の「身体知」を活用することでリハ効果を豊かにする可能性がある。
『身体知』とは身体とこころが交差するところであり、患者が自身のフェルトセンスに注意を向けるとき、そこに何らかの気づきが起こるが、それはしばしば「あぁ、そうなんだ」とういう情動的に腑に落ちる感じを伴い、それが患者の心身の進展につながる。これが『身体知』である。セラピストがフォーカシングによって傾聴し、患者を深く理解し、患者自身の『身体知』をリハにいかしていくならば、その効果はさらに高められ、患者の新しい生き方や生き直しもつながっていく可能性があるのではないか。
『身体知』の実践と理論は新しい段階に入っており、フォーカシングとともに、体と心の出会う領域の活用とういう新しい段階に、既に我々は入っているのだと考えられる。リハでもフォーカシングを活用するためには、様々な工夫が必要と思われるが、何らかの形で役に立つ事は間違えないであろう。
【コメント】
患者が全ての経験をスムーズに言語化することは難しく、表出が短絡的になりがちでもある。またそこからセラピストが訓練を構築していくという事にもいつも悪戦苦闘する。
今回のヒントの内容はまだまだこれらの解決策になるのかは、自身としては十分な理解には足りていない。しかしこのような視点が心理学にあることを知り、もう少しひも解いていきたいと感じた。
(文責:井内勲 岡崎共立病院)

 

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