Esercizio Terapeutico Conoscitivo Aichi
Movement intention After Parietal Cortex Stimulation in Humans
人間における頭頂葉皮質刺激後の運動意図
著者:Desmurget M, Reilly KT, Richard N, Szathmari A, Mottolese C, Sirigu A.
雑誌:Science. 2009 May 8;324(5928):811-3.
背景:頭頂葉と運動前野は、運動意図や運動主体感において共に役割を持つ。しかし、運動前野と頭頂葉における運動意図と運動主体感について、特定の役割は不明である。我々は頭頂葉および運動前野の領域を直接刺激することによって、特定の身体部分で運動反応を誘発することができ、これらの運動は運動意図や運動主体感に関わる運動関連領域において主観的経験を伴うか、先行すべきであると推論した。
方法:中心溝前後に脳腫瘍を有する7名に直接電気刺激(DES)を用いた。術後後遺症のリスクを最小限に抑えるために、DESを機能マッピング技術として使用し局所麻酔下で手術が行われた。DESは、標準的な増加強度(2,5,8mA)および持続時間(1,2,4秒)とし、各刺激部位に対して最大4回、非連続的な反復が行われた。実験を通して、非麻痺側における顔、手、手首、肘、膝、足を覆う12の筋の、筋電図(EMG)信号を収集した。 刺激部位は、個々の磁気共鳴(MR)画像上に高分解能で局所化され、術中ニューロナビゲーションシステムを用いてオフラインで再構成された。
結果:右側の下頭頂部領域への刺激は、反対側の手、腕、足を動かす強い意思と欲求が起こったのに対し、左側の頭頂部領域への強い刺激では、唇を動かして話す意思が喚起された。頭頂葉の刺激強度が増加したとき、参加者は実際にこれらの運動を行ったと信じていたが、筋電図活動は認められなかった。運動前野領域への刺激は、口唇および対側の四肢運動を引き起こしたが、患者は動いたことを認識していなかった。
結語:我々は2つの主な相違点を報告する。
(i)後頭頂皮質の刺激は、実際の運動反応がない場合でも、動く、動いたと報告させた。
(ii)前頭皮質の刺激は、患者が意識的に検出しなかった四肢および口の動きを引き起こした。
運動意図と運動主体感は、運動実行前の頭頂葉の活動の増加から生じる。
コメント:
今回の論文は、2017年4月に行われた認知神経リハビリテーションスペシャルセミナーの講師であったAngela Sirigu先生のグループの研究報告です。その際に今回の論文も受講者に配布されました。Sirigu先生は講義内で、 「運動の意図は、運動が実行される前に頭頂葉の活動の増加の結果として現れる。そして運動を実行しているという主観的な感覚は、運動それ自体から生じず、それ以前の意識的な意図と予測の結果から生成される。一方「運動前野」の刺激は肢や口を実際に動かしたが、意識的な意図(文面では運動意図と訳させてもらった)や自覚がなかった」とありました。
私は、運動主体感は予測と結果から起きる感覚であり、前頭葉運動関連領域での役割と認識していましたが、今回の論文から、先行する頭頂葉の活動がより重要であると認識を改めました。訓練において頭頂葉の活性化をターゲットに構築していくことの必要性を感じました。
(文責 進藤隆治 医療法人光生会 赤岩病院)