Esercizio Terapeutico Conoscitivo Aichi
著書:皮膚感覚の不思議 「皮膚」と「心」の身体心理学
著者:山口 創
発行所:BLUE BACKS
文責:岡崎共立病院 作業療法士 永原 巧
目次
第1章:触れる!
1‐1:触覚のしくみ
1‐2:触覚の脳への伝達
1‐3:触覚と固有感覚
1‐4:触覚の進化
1‐5:第六感としての皮膚感覚
第2章;痛い!
2‐1:痛みのメカニズム
2‐2:人それぞれの「痛み」
2‐3:痛みと心の発達
2‐4:「痛み」の進化論
第3章:痒い!
3‐1「痒み」とは何か
3‐2:痒みのメカニズム
3‐3:ストレスと痒み
3‐4:「痒み」の進化論
第4章:くすぐったい!
4‐1:くすぐったさの正体
4‐2:くすぐったさと心
4‐3:くすぐったさの進化
第5章:気持ちよい!
5‐1:「気持ちよい」の正体
5‐2:痛みと快感
5‐3:性感の気持ちよさ
5‐4:「気持ちよさ」の意味
第6章:皮膚感覚と心
6‐1:触覚の特徴
6‐2:触れることが育む心
6‐3:視覚時代の皮膚感覚
内容と臨床のヒント
認知神経リハビリテーションでは接触課題や空間課題において対象者の身体に触れ、課題を提示している。著者は「皮膚は露出した脳」「皮膚=心」と提言し、「痛み」や「痒み」といった皮膚感覚についても生理学的な側面だけで皮膚を解明するのではなくて心理学的な影響もあることを考慮しなければいけないと述べている。そして、皮膚感覚は脳と密接に関わっており、好きな人に触られたら気持ち良いのに、嫌いな人から触れられると鳥肌が立つといったように皮膚は対人関係のアンテナとしての役割をもっている。その為、皮膚感覚は幼少期から形成されるものであり幼少期のスキンシップがメンタルヘルス(心の成長)に重要であることを述べている。私は本を読むまで考えていなかったが、対象者に触れるということを何気なく行ってきたが、今までの経験から成り立っていることだということを考えさせられた。
また、本書の中に人間が1秒に5㎝ほどの速度で触れられると気持ち良いと感じ、それより遅くても速くても気持ち良さは低下してしまうという研究内容が記載されていた。対象者に感覚へ注意を向けさせると同時に、セラピスト側の対象者に対する接し方や動かし方を配慮しなければいけないと感じさせる内容であった。
一般的に分かりやすい言葉で解説しており、リハビリテーションに応用するだけでなく、子育てや他者と触れ合ううえでも参考になる一冊であると思う。