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著書:注意と意欲の神経機構

著者:日本高次脳機能障害学会 教育・研究委員会

発行所:株式会社 新興医学出版

第1版発行:2014年10月13日

目次

第Ⅰ章 注意・意欲の捉え方

 1.注意の新しい捉え方

 2.意欲の新しい捉え方

 3.標準注意検査法・標準意欲検査法CARSの臨床的意義

 4.意欲・注意・意義 -志向性の神経心理学-

第Ⅱ章 注意障害・意欲障害の臨床

 1.Action disorganization syndrome

 2.Balint症候群

 3.消去現象の病態と注意機構

 4.抑うつとアパシー

 5.Kluver-Bucy症候群

 6.脱抑制症候群

第Ⅲ章 トピックス

 1.注意とメモリー・トレース -言語性短期記憶(STM)との関連で-

 2.デフォルトモードネットワークと注意

第Ⅳ章 治療

 1.注意障害・意欲障害の経過

 2.注意障害のリハビリテーション

 3.アパシーの薬物治療,リハビリテーション

   脳損傷後の発動性低下,disorders of diminished motivation

(動機減少障害)に対して

 

本書には高次脳機能である「注意」「意欲」に関する捉え方、また臨床上での考え方が書かれている。リハビリテーションを行うに当たりこの二点は日々の臨床を通してとても重要なことと感じているが、本書の中で私が特に興味を感じたのはワーキングメモリと注意機能の関係である。また、注意による行動の制御、すなわち注意によるトップダウン制御の認知的メカニズムはどのようなものかという問題について、前部帯状回が葛藤刺激の処理を含めて、注意の制御機能のキーとなる役割をもつとするエビデンスが集積されている点にも注目したい。さらに意欲の捉え方も外界から特別な賦活刺激がなくても個体の内部から生じてくる活動性という意味での「自発性」ではないかと考えている点も非常に興味深い。また、アパシーは無関心に伴ってみられる動因喪失とされているが、これは前部帯状回回路で無為無関心(Apathy)が生じるとされている。この回路は基底核との関連も示唆されており、パーキンソン病における意欲低下も関係してくると考えられ臨床のヒントになりそうだ。

本書には、健常人においても起こりうる注意の問題が書かれており私自身の経験を思い出すことで理解しやすい部分もあり本書を通して、「注意」「意欲」を学ぶ際には難しく考えすぎず気楽な気持ちで学んでいくことができるのではと思える一冊である。

(文責 岡崎南病院 西村 郁江)

注意と意欲の神経機構

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