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頭頂連合野と運動前野はなにをしているのか?

 ─その機能的役割について─

著者:丹治 順(東北大学脳科学センター)
理学療法学 第40巻第8号 641~648頁

はじめに  
大脳の頭頂連合野は,私達の周囲を取りまく世界がどんなものかに関する情報を集め,そして認知する働きにおいて中心的な役割をしている。頭頂連合野の大切さは,そこが損傷されたときに起こる顕著な症状を見るとあきらかである。20世紀の初頭に,頭頂葉の損傷による徴候を調べ,明確に記述した重要な報告がある。ひとつはBálintによる,もうひとつはHolmesによる報告である。Bálintは注意の障害,精神性注視麻痺,運動の視覚的制御障害を強調した。他方Holmesは空間知覚の障害が本質的に重要と述べ,物体の空間的位置と相対的位置関係の認知が障害されるといった。その後右頭頂葉の損傷で半側空間無視が起こることが知られ,そして視空間失認という表現が用いられるようになった。その後の研究の発展によって,視空間に関する情報が頭頂葉でどのように処理され,認知機能に結びつけられるかが詳細に知られるようになった。
他方触覚や運動感覚などの体性感覚は,大脳の体性感覚野から頭頂連合野に送りこまれ,身体部位や姿勢の知覚として統合される実態が詳細に研究されている。さらに,聴覚情報や平衡感覚情報も頭頂連合野へ送られ,処理されている。すなわち頭頂連合野は多種類の感覚情報polysensory signalsの統合と認知の場所である。そのような統合のようすと,統合された情報の使われ方を考察したい。

コメント
この論文は体幹の到達機能の整理している時に読んだ論文です。
空間認知を担う場所として頭頂連合野があります。多種の感覚情報を収集・統合し、知覚情報としてさらにそれを抽象・概念化する機能を要し、自己と外界の認知を行っています。また、注意・判断・情報の短期保持に関わり、前頭葉のコネクションが強いことから、どのように動くのか動作イメージの形成に重要な役割があります。
体幹機能と言えば姿勢を保持する機能であり、四肢を自由にするために無意識的に身体を制御するといった印象を持っていました。しかし、到達機能について整理していくと高次な脳領域である頭頂連合野の働きが重要であることが理解できました。
この論文では、頭頂連合野について解剖学的・神経学的・病理学的な観点から解説してあり、頭頂連合野の機能を理解するのにわかりやすい内容となっています。
認知神経リハビリテーションでは多感覚統合という言葉をよく聞きます。頭頂連合野の機能を理解しておくことは大切であると考え今回の論文を紹介させて頂きました。
(文責 赤岩病院 作業療法士 進藤隆治)

 

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