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高齢者における歩行時の筋の同時活動は転倒恐怖感と関連がある

雑誌: 理学療法学Supplement 2009

著者: 永井 宏達 

 

【抄録】

転倒恐怖感を有する高齢者は,年齢や歩行速度の影響とは無関係に,歩行時の足関節の同時活動が高まっていることが明らかになった.これは,転倒恐怖という情動が歩行動作時の姿勢制御戦略に関連していることを示唆している.この同時活動が増大した原因としては,動作の安定性を得るための代償的戦略を選択したことが考えられるまた、不安や緊張状態といった情動はγ運動ニューロンの興奮性を増大させることが報告されており,今回の結果に関連している可能性がある.この同時活動の増大は動作における安定性獲得というメリットがある反面,外乱刺激に対する適応能力を阻害するともいわれている.つまり、同時活動を高めた歩行戦略をとっている高齢者では運動の自由度が制限されるため,例えば実生活場面において、つまずきや滑りが生じた際に,適切な姿勢調整を瞬時に行う能力等が低下している可能性がある

 

【コメント】

転倒恐怖が筋活動に影響を与えるという報告です。恐怖心があっても歩行を日常的に行っている高齢者は多数おり、転ばないように獲得した恐怖を制御している歩行(安定性重視)が異常歩行であり新たな正常の歩行(適応能力の高い)への運動学習が阻害される可能性が示されていると感じました。

(文責 みず里 岩谷竜樹)

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