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高齢骨折患者における転倒恐怖感に影響する要因の検討

掲載:日職災医誌,62:23-26,2014

著者:古賀隆一郎(独立行政法人労働者健康福祉機構山口労災病院中央リハビリテーション部)他

 

要旨

【目的】転倒骨折後の高齢者における退院後の転倒恐怖感に影響する要因について把握,検討することを目的とした.

【方法】転倒による骨折と診断され,自宅復帰された65歳以上の高齢患者103例に対し,郵送によるアンケートを実施した.転倒恐怖感を測定する指標としてModified Falls Efficacy Scale(以下MFES)を用いた.MFESの110点以上を非恐怖群,110点未満を恐怖群と分類した.2群間において,基本属性(年齢,性別,疾患別,退院時Barthel Index)および各項目を比較,検討した.さらに,転倒恐怖感を抱いている対象者の要因となる項目を明らかにするために,多重ロジスティック回帰分析を実施した.

【結果】自宅復帰した高齢者の約52%が転倒恐怖感を感じていた.性別では,有意差はみられず,年齢,退院時Barthel Indexにおいて有意差がみられた(P<0.01).なかでも,大腿骨近位部骨折患者は橈骨遠位端骨折患者に比較してMFESが優位に低い値(P<0.028)で転倒恐怖感が強い傾向にあった.健康状態や生活状況に関する設問の各項目の中で住宅改修の有無,介護保険の有無,他者からの介護の有無,屋内での歩行手段,屋外での歩行手段,痛みの有無,退院時Barthel Index(P<0.01)であった.また,多重ロジスティック回帰分析において,転倒恐怖感に影響する要因として「後期高齢者」「屋外移動に歩行補助具を使用している」「痛みがある」の3因子が確認された.

【結語】対象者の約半数が転倒恐怖感を感じ,➀後期高齢者,②屋外移動に歩行補助具を使用している③痛みがあるが挙げられた.

 

コメント

 転倒恐怖感とは「身体能力が残されているにも関わらず移動や位置の変化を求める活動を避けようとする永続した恐れ」とTinettiは定義している.高齢者の活動量が低下すれば,廃用に伴う身体機能の低下が起こり,ADL能力やQOLの低下にもつながることが予想される.

  その為,転倒は様々な要因があるとされる中で恐怖心による活動低下により転倒リスクを高めないようにMFESを利用した恐怖感の分析や傾向を把握する必要があると思われた.

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